相続財産の使い込みが発覚した場合
目次
1 使い込みがあったかどうか明らかではない場合
まずは,被相続人の預金通帳の履歴を取り寄せるなどして,よくわからない支出がないかを調べます。これによって,使い込みが発覚するケースがあります。
最終的に使い込みがあったことを明らかにできなかった場合には,遺産分割協議においては,使い込みはなかったものとして扱われます。
納得がいかない場合には,遺産分割協議ではなく,不法行為に基づく損害賠償請求や不当利得に基づく返還請求の訴訟を提起することもできます。
なお,不法行為に基づく損害賠償請求や不当利得に基づく返還請求はいずれも選択することができますが,損害賠償請求の場合には,使い込みが発覚してから3年という短期消滅時効があります。もっとも,不法行為時である使い込みを行ったときから遅延損害金を請求できるので,その点はメリットといえます。
2 使い込みが判明した場合
⑴ 使い込みが相続開始前の場合
まず,相続人に贈与の意思があったといえるかが問題となります。相続人に贈与の意思があったといえる場合には,それは特別受益の問題となるからです。
特別受益といえる場合には,原則として遺産への持ち戻しをすることになります。
特別受益といえない場合には,被相続人が使い込みをした相続人に対して有する損害賠償請求権または不当利得返還請求を,相続人が相続することになりますので,それを行使して取り返すことになります。
⑵ 使い込みが相続開始後の場合
改正された民法906条の2により,使い込みをした相続人以外の相続人全員の同意があれば,使い込まれた分は,遺産への持ち戻しをすることができます。
3 不法行為に基づく損害賠償請求について
⑴ 被相続人の通帳を確認したところ,よくわからない支出があったとしても,生前の被相続人本人が引き出している場合には,使い込みがあったというのは難しいので,まずは共同相続人の1人が引き出したことを立証する必要があります。
この点については,払戻伝票の筆跡,金銭の移動状況,被相続人の当時の健康状態,預金通帳の管理状況などの各種資料に基づいて立証することになります。
⑵ 次に,共同相続人の1人が引き出したことが立証できたとして,引き出した共同相続人にその権限があったかが問題となります。被相続人の同意があったり,もともとその共同相続人に引き出す権限があったりした場合,引き出した行為は,その権限の範囲内で行われたのであれば,違法とはいえません。
ただ,この点は引き出しを行った共同相続人が,自分にはその権限があったということを立証する必要があると思われますので,請求する側が考えることではありません。
⑶ 最後に,引き出された資金の使途も問題となります。
引き出しを行った共同相続人が,その使途について不十分な説明しかできないとなると,仮に権限があったとしても,その権限の範囲を超えた違法な引き出しとされる可能性があります。また,その使途が明らかになっても,その金額が相当な額を大きく上回るような場合には,その相当な額を除いた部分について,違法な引き出しがあったとされる可能性があります。
引き出しが被相続人の死後である場合には,基本的には違法とされますが,葬儀費用に充てた場合や相続債務の弁済に充てた場合は違法となされません。なお,今回の改正により,葬儀費用や相続債務の弁済に充てるために,相続人による預貯金の一部払戻し制度が創設され,相続開始後に共同相続人がした財産の処分については,遺産への持ち戻しが認められるようになったことからすると,被相続人の死後に引き出しがなされたケースについては,法整備が充実したといえます。
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